司法書士法人みつわ合同事務所

家族信託

家族信託

家族信託とは?

信託とは、「自分の財産を、信頼できる人に託し、その財産を自分で決めた目的に従って、自分または自分の大切な人のためにその財産を管理・運用・処分してもらう」仕組みです。そして、その登場人物が家族内の人だけでなされているものを特に「家族信託」と呼んでいます。 例えば、高齢の両親が、長男にお金を預けるとします。そのお金は両親の日常生活の費用に当てるためだけに使うという約束をします。 そして、子はその約束通り両親の食料や、生活必需品の購入にあてます。(この例は、厳密には信託契約と評価できませんが、説明を分かりやすくするためにご容赦ください。) このような構造が家族信託です。この事例では、財産は金銭になります。信頼出来る人は長男、決められた目的は、日常生活の費用に当てるためだけに使う、そして、長男は、生活必需品を購入という決められた目的に沿った行為を行っています。 このケースで、家族信託の必要性をあまり感じることは無いと思われるでしょう。では、この仕組みの特徴と家族信託がどのような場合に効果を発揮するのかご紹介します。

家族信託の特徴

信託は代理とは異なるものです。異なる点は、託した財産は自分のものでなくなるということです。また、託された人の名義人なるものの、託された人の固有の財産でもない、分別管理義務のある、いわゆる誰のための財産でもなくなります。このようにすることで、託された人に債権者がいたとしても、その債権者の引当て財産にならないこととされています。 また、代理の場合、代理人は、本人のためにすることを示して契約等の法律行為を行いますが、信託の託された人は、当事者として契約等の法律行為を行います。このような点で、代理とは異なる制度となっています。 他の特徴として、信託の中で定めることで、遺言書を作成したのと同様の財産承継の効果は持たせることができたり、遺言ではできない数世代に渡る財産承継ができたりなど、柔軟に財産の管理・運用・処分が可能となります。 以下、信託における登場人物を簡単に説明します。

1.委託者
財産を託す人のこと。信託の内容を決定する。
2.受託者
財産を託された人のこと。信託の目的に従って、信託財産の管理・運用・処分を行なう。
3.受益者
信託財産から利益を受ける権利(受益権)を持つ人。 ほとんどのケースでは、贈与税の課税対象にならないように当初委託者が当初受益者となる。
4.受益者代理人
受益者の代理人となって、受益者の権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する人。 受益者の意思表示に不安がある場合に備えて信頼出来る人を選任しておくことが多い。
5.信託監督人
信託の目的に従い、信託財産の管理等が行われているかを受益者に代わって監視・監督する人。 家族信託では、専門家等を選任し、実務の運用についてアドバイスを求める立場の人が欲しいと言う場合に選任されることがあります。

家族信託例:認知症対策

Aは、体力の衰えを感じ、近いうちに介護施設に入所し、子供達(長女B・長男C)に迷惑をかけないようにしようと考えていた。 そして、現在の自宅を売却し、介護施設の入所資金に当てることを考え、自宅の売却相場や、入所できる介護施設を調べていたところ、Aは認知症を発症してしまった。 上記のようなケースで、なんら対策をしていなかった場合と、家族信託を利用していた場合にどのような違いがあるのかをご紹介します。

1.対策をしていなかった場合
Aは認知症の症状により、意思表示ができなくなり、不動産の売買契約を締結できなくなってしまったので、家庭裁判所に成年後見の申立をすることになった。
成年後見の審判が出るまで、申立から早くても1ヶ月かかることもあると言われ、自宅売却し、介護施設の入所資金が用立てることが出来るまで、長女Bと長男Cが交代で、Aの身の回りの世話をすることになった。
1ヶ月後、成年後見の審判が出て、成年後見人として、長女Bが選任され、成年後見監督人として、専門家弁護士Dが選任された。
そこで、売却手続を進めたところ、買主が見つかったが、自宅の売却には、後見監督人の同意と、家庭裁判所の許可が必要とのことで、さらに売却許可決定が出るまで2週間の経過し、費用も発生した。
その後、自宅売却ができ、介護施設に無事入所できたが、手続き開始から、3ヶ月以上経過していた。
2.家族信託を利用していた場合
Aは認知症の症状により、意思表示ができなくなったが、家族信託契約により、自宅の登記名義をBに移転し、介護施設入所資金に使用するための自宅売却権限をあたえていたので、Bが単独で売却手続きをスムーズに進めることができた。
そして、AはBに託していた不動産を現金化できたので、その資金により、介護施設に入所することができた。
(注:家族信託では施設入所契約(入所者本人が契約する必要がある場合)の代理人になることはできません。入所する施設の契約で代理権が必要な場合、任意後見契約等で法律上の代理権が別途必要となります。)

家族信託の費用

家族信託にかかる費用としては、公正証書作成費用、信託財産に不動産がある場合は不動産登記費用(登録免許税・司法書士報酬)、家族信託の専門家のコンサルティング費用等が考えられます。

1.公正証書作成費用
一般的に家族信託については、委託者と受託者の契約を公正証書を作成する方法によって行います。それは、対外的に一定の財産が信託財産であることを公示し、証明しやすくするためです。
また、信託された現金は、信託専用の銀行口座を作成して保管すべきですが、現状では、全ての銀行で信託専用の口座開設に応じてもらえるわけではありません。現在、信託専用口座の開設に応じている銀行のほとんどが、家族信託契約が、公正証書でなされていることが条件となっています。
公正証書の作成は公証役場で行いますが、公証人の手数料は信託する財産の価格により変わります。
2.不動産登記費用
不動産を信託した場合、委託者から受託者への所有権移転及び信託の登記をします。
その際に、登録免許税を納付しなければなりません。税率は固定資産税評価額の1,000分の4(0.4 %)となります。
しかし、土地については、令和3年3月31日までは、税率が1,000分の3(0.3%)に軽減されています。
また、信託の登記を司法書士に依頼した場合に支払う報酬は、不動産の個数や、申請先の法務局の数などによって変わってきます。
3.その他の費用
その他の費用として、専門家へのコンサルティング費用や、公証役場へ提出する、銀行残高証明書や、不動産の登記事項証明書、固定資産税評価証明書等の取得費用等、細かな費用があります。
4.費用の目安
家族信託では、家族によって事情が代わり、契約条項や、信託する財産の多寡によって、費用に大きなさがありますので、必ず事前にお見積もりの依頼をするようにしましょう。
その際に、より正確な見積金額を得るために、信託する財産の内容と財産額、そして、不動産が含まれる場合は、不動産の固定資産税評価額の分かるものを用意するようにしてください。
そのようにすれば、よほど複雑な信託契約の内容でない限り、見積額と、実際の負担額が大きく異なることはないと思われます。
大まかな目安として、信託財産が3,000万円程度で、不動産が含まれない場合、総額50万〜60万円程度、不動産が含まれる場合で、80万円〜90万円程度までになる方が多いと思われます。 これは、あくまでの目安となりますので、詳しくは、お気軽にお問い合わせください。